
展示会でお話ししていると、「鋳物(いもの)と鍛造品(たんぞうひん)って、何が違うんですか?」と聞かれることがよくあります。
どちらも削る前からある程度の形ができているので、並べてみると見た目はよく似ています。でも作り方がまったく違うので、中身の性質も、削るときに気をつけるところも変わってきます。
勝井鋼業は、もともと鍛造品を売る会社として始まりました。そこから鍛造品を加工するようになり、今は鋳物の切削加工も行っています。どちらにも縁がある会社なので、今回はよく聞かれるこの違いをまとめてみました。
作り方の違い:溶かすか、叩くか
名前は聞いたことがあっても、作り方まではピンとこない方も多いと思うので、まずはそこからです。
鋳物は鋳造(ちゅうぞう)という方法でつくられたものです。金属をドロドロに溶かして型に流し込み、冷やして固めます。たい焼きを想像してもらうと近いかもしれません。砂で型をつくる砂型鋳造、金型に圧力をかけて流し込むダイカスト、ロウの模型を使うロストワックス(精密鋳造)など、いろいろな方法があります。
鍛造品は、鍛造(たんぞう)という方法でつくられたものです。金属を溶かさずに、叩いたり押しつぶしたりして形をつくります。こちらは刀鍛冶のイメージに近いです。いまは型を使ってプレスやハンマーで成形する型鍛造が多く、加熱してから成形する熱間鍛造と、常温のまま成形する冷間鍛造があります。
砂型鋳造やダイカスト、熱間鍛造と冷間鍛造など、ここで出てきたいろいろな作り方は、また別のコラムで詳しく書こうと思っています。
性質の違い
溶かして固めるか、叩いて締めるか。この違いで、出来上がったものの性質もかなり変わります。
| 鋳物 | 鍛造品 | |
|---|---|---|
| 形の自由さ | 高い(中が空洞の形や、入り組んだ形もつくれる) | 比較的シンプルな形 |
| 中身 | 巣(小さな空洞)ができることがある | 詰まっていて、巣はほとんどない |
| 強さ・粘り | 鍛造品より劣ることが多い | 鍛流線が通っていて強い |
| よく使われる材質 | FC、FCD、AC4C、AC7A、CAC など | S45C、SCM440、SNC631 など |
| よく見る部品 | ハウジング、ボディ、ケース | シャフト、アーム、工具の部品 |
いちばん大きいのは中身の違いだと思います。鋳物は、溶けた金属が固まるときのガスや縮みで、中に小さな空洞(巣)ができることがあります。外からは見えないので、削ってみて初めてわかる、ということもよくあります。
鍛造品は叩いて締め固めているので、中が詰まっていて巣はほとんどありません。金属の組織が形に沿って流れるように並ぶ(鍛流線、ファイバーフローとも言います)ので、強くて粘りがあります。力のかかるシャフトや工具の部品に鍛造品が多いのは、これが理由です。
鋳物と鍛造品、どう選ばれている?
では、鋳物と鍛造品、どちらを選ぶのがいいのでしょうか。これは部品の形や使われ方によって変わってきます。
ざっくり言うと、中が空洞だったり入り組んでいたりする形なら鋳物、大きな力やくり返しの力がかかる部品なら鍛造品、というのが基本です。あとは数量と型の費用も関わってきます。砂型の鋳物は型が比較的安いので、少ない数量でも使いやすい。鍛造は型が高いぶん、ある程度まとまった数量向きです。実際には、材質や重さも含めて、設計の段階で決められています。
なぜ削る必要があるのか
鋳造や鍛造のときに、最初から完成の形にしてしまえばいいのでは?という疑問が浮かぶかもしれません。
鋳物も鍛造品も、型でつくった時点では、寸法がそこまで正確ではありません。表面もざらざらしているので、ほかの部品と合わせる面や、軸が入る穴などは、そのままだと使えないことがほとんどです。
なので、精度が必要なところだけを、あとから削って仕上げます。これを「追加工」と呼ぶことが多いです。形はもうできているので、丸い棒や四角い材料から全部削り出すより、削る量も時間も少なくて済む。ここが鋳物や鍛造品を使う良いところです。
ただ、元の形が決まっているぶん、削る側はその形に合わせて考える必要があります。そこに、鋳物と鍛造品それぞれのクセが出てきます。
削るときのポイント
ここからは、実際に削るときに気をつけたいことです。まずは鋳物にも鍛造品にもあてはまる話から。
鋳物も鍛造品も、仕上げたいところには削りしろがついています。削りしろは、削って仕上げるために、あらかじめ大きめにつくっておく部分のことです。
削りしろが少なすぎると、削っても元の黒っぽい表面(黒皮)が残ってしまいます。逆に多すぎると、削る時間がかかってコストが上がります。型でつくるものは、場所によって削りしろが多かったり少なかったりしやすいので、そこをどう扱うかが大事になります。
削りしろと同じくらい大事なのが、どこを基準に削るかです。鋳物も鍛造品も、一つ一つ寸法が微妙に違います。なので、最初に「どこを基準に削るか」を決めておかないと、仕上がりがずれたり、黒皮が残ったりします。基準になる面や穴を図面で決めておくと、加工する側も進めやすくなります。
鋳物を削るとき
次に、鋳物ならではのポイントです。溶かして固めるという作り方から来るクセが、削るときにいろいろ出てきます。
まず、鋳物の表面(鋳肌)は、材質によっても異なりますが、中より硬いことが多く、型の砂が残っていることもあります。表面を浅くなでるように削ると刃物が傷みやすいので、最初の切り込みは表面の下までしっかり入れるのが基本と言われています。
それから、中にあった巣が削った面に出てくることがあります。見た目だけの問題ならまだいいんですが、油や空気が通る部品だと漏れの原因にもなります。なので、どこまでなら大丈夫かを、頼む側と削る側で事前にすり合わせておくと安心です。
さらに、鋳物には型から抜きやすくするための傾き(抜き勾配)もついています。ですので、平らに見える面も実は少し斜めになっていることが多く、そのままだとまっすぐ固定しにくいです。そこで、形に合わせた治具(削るものを固定するための道具)を使うのが一般的です。
また、肉の薄いところは削ると歪んだりビビったりしやすいので、固定の仕方や削る順番にも工夫が要ります。
鍛造品を削るとき
鍛造品の場合、叩いて締めた強さは部品としては良いところなんですが、削るときには逆に手ごわさになります。
まず、粘りがあるぶん削るときの抵抗が大きくて、刃物が減りやすいと言われています。材質や熱処理の状態に合わせて、刃物や削る条件を変えたりします。
それから、型の合わせ目にバリが残っていたり、上と下の型が少しずれていたりすることもあります。そのため、削り始めは刃が当たったり当たらなかったりする「断続切削」になりやすく、刃物に負担がかかります。
もうひとつは熱処理です。鍛造品は焼入れなどをすることが多く、そのあと寸法が少し動きます。どのタイミングで仕上げるか、どれくらい動くかを見込んで工程を組むのが大事になります。
よくある質問
展示会などでよく聞かれる質問も、あわせてまとめておきます。
Q. 鋳物と鍛造品、どっちが強いんですか?
一般的には鍛造品のほうが強いと言われます。ただ、同じような材質で比べたときの話で、部品の使われ方によっては鋳物で十分なこともあります。
Q. 図面を出すときに、伝えておいたほうがいいことは?
加工の基準にしたい面、巣がどこまでなら大丈夫か、熱処理があるかどうか。このあたりがわかると、見積もりも工程の相談もスムーズです。わかる範囲で大丈夫です。
まとめ
鋳物と鍛造品は、見た目は似ていても中身はけっこう違います。その違いがわかったうえで削ると、不良が減ったり、無理のない工程が組めたりします。
勝井鋼業では、鋳物も鍛造品も、追加工の相談をお受けしています。「この鋳物、削ってもらえる?」「鍛造品の加工先を探してる」など、図面がまだ固まっていない段階でも大丈夫です。気軽に相談してもらえたらうれしいです。